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介護現場のICT・介護ロボット導入を成功させるために -機器を使いこなす組織づくりと業務改善の視点-

  • 業種 介護福祉施設
  • 種別 レポート

多くの介護施設では、人材不足や業務過多といった課題に直面しています。これらの課題を解消するために注目されているのが、ICTや介護ロボットの導入です。介護現場の中で、見守りセンサーや電子記録システム、インカム、介護支援ベッドなどのICT機器は、職員の身体的・心理的負担を軽減し、利用者への対応時間を確保するうえで大きな助けとなります。

しかし現実には、

導入したものの現場が使いこなせていない」「忙しさが変わらない「費用に見合った成果が見えない

といった声も少なくありません。ICTの機器を導入するだけでは、業務改善にはつながらないのです。導入後に効果を出すためには、ICT導入そのものではなく、導入のプロセスと定着の工夫がカギとなります。

介護現場でICTを活かすための課題

ICT導入後に期待するような効果が得られない背景には、いくつかの共通した課題があります。

一つ目は、現場の業務内容や働き方に合っていない機器が導入されていることです。業務の流れを見直すことなく機器だけを導入しても、日々の業務に馴染まず「かえって手間が増えた」と感じさせてしまいます。また、職員が機器の操作に慣れるまでの支援体制が不十分であれば、現場は「使いこなせないもの」として受け入れを拒む傾向にあります。

二つ目は、導入の目的や期待する効果が現場に正しく共有されていないことです。現場が「なぜこれを使うのか」「どのような効果が期待されているのか」を理解していなければ、機器は単なるモノにとどまり、積極的な活用には至りません。

導入のために必要な3つの視点

ICT・ロボットの導入を成功させ、業務改善につなげるためには、導入前後で押さえておきたい3つの視点があります。

1.業務の「見える化」と整理

まずは、現場で行われている業務を一度すべて洗い出し、誰が・いつ・どこで・どのような作業をしているかを明確にします。
これにより、ICTによって効率化できる作業と、そうでない作業が区別され、無理のない導入範囲が見えてきます。
また、業務の無駄や重複も浮き彫りになり、機器の導入以前に必要な「業務改善ポイント」も明らかになります。

2.目的の共有

ICTの定着には時間がかかるため、「すぐに成果が出なくても、継続すれば確実に改善につながる」という未来像を現場に伝えることが重要です。たとえば、「このシステムで記録時間を短縮できれば、1日15分、利用者との会話にあてられる」といった、実感できるビジョンの提示が効果的です。

3.段階的かつ計画的な導入設計

すべての事業所やユニットに一斉導入するのではなく、まずはモデルユニットや小規模グループで試行し、状況を見ながら徐々に拡大していく方法が望まれます。
また、機器の選定から職員研修、導入後の効果検証までを一連の流れとして計画し、補助金や加算制度も活用しながら段階的に導入を進めることが、失敗リスクを低減させます。

介護現場でのICT導入で得られる主な効果

適切に設計されたICT・ロボットの導入は、現場にさまざまなプラス効果をもたらします。

  • 記録の電子化により手書きの手間が省かれ、入力作業のスピードが向上する
  • 見守りセンサーの活用で夜間巡回が削減され、利用者の睡眠が確保される
  • 情報共有がリアルタイムで行えるようになり、申し送りや会議の効率が向上する
  • 時間や人手の余裕が生まれ、利用者との対話や個別ケアの質が向上する

これらの効果は、現場で働く職員の働きやすさ向上にも直結し、結果的に離職防止や人材定着にも寄与します。

導入が失敗する典型的なパターン

一方で、ICT導入がうまくいかない事例もあります。多くの場合、次のような共通点があります。

  • 「とりあえず補助金が出るから」と目的を曖昧にしたまま導入する
  • 現場に相談せずにトップダウンで決定し、職員が納得していない
  • 導入後の研修や運用ルールが整っておらず、機器が使われずに放置される

こうした失敗は、準備不足や情報不足だけでなく、「現場との温度差」「導入の目的が共有されていない」「使えないことを言い出せない雰囲気」など、心理的・組織的な問題が背景にあることが少なくありません。

たとえば、「機器が届いたまま未開封で保管されていた」「研修が1回だけで終わり、フォローがなかった」「リーダー層だけが使っていて、一般職員が使っていない」──といった状況は、多くの現場で見られます。「自分たちは使いこなせない」「現場での導入は無理」といった“諦めの空気”が広がる前に、失敗の兆候を察知し、早めに対策を講じる必要があります。

失敗を避けるためには、以下のような工夫が有効です。

  • 現場の職員から定期的にフィードバックを集める
  • ICT担当者(推進役)を1名配置し、困ったときの相談窓口にする
  • 操作が不安な職員向けに、紙のマニュアルだけでなく動画やチャートを用意する
  • 小規模なユニットから導入を始めて、成果が出てから横展開する

ICTの導入とは、「技術を入れる」ことではなく、「人と現場を変える」ことです。導入後も継続的な関わりと改善が必要であり、あらかじめ「つまずきやすいポイント」を押さえておくことで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。

介護テクノロジー導入支援事業 補助金と制度を活用したICT・介護ロボット導入支援

ICTやロボット機器の導入を成功させるためには、補助制度の活用も重要なポイントとなります。介護テクノロジー導入支援事業」は、業務負担軽減や生産性向上を目的としてICT機器や介護ロボットの導入にかかる費用を補助する制度です。

この補助制度では、記録支援・見守り支援・移乗支援などの機器が対象となっており、各事業所のニーズに応じて柔軟に選定することが可能です。ただし、補助を受けるには第三者による業務改善支援又は研修・相談等による支援を受けることが要件となっています。単なる機器購入だけでなく、現場への定着や効果的な活用に向けた支援がセットで求められている点が大きな特徴です。

導入を検討される際には、都道府県など各自治体に申請を行う必要がありますが、これらの申請・計画づくりに不安がある場合も、日本経営では制度要件に即した導入支援・計画立案・実行支援を提供しており、申請段階から活用フェーズまで伴走支援が可能です。

※申請締め切りや要件は、都道府県によって異なります。詳しくは各都道府県の情報をご確認ください

ICTや介護ロボットを選ぶだけでなく「活かす」ために

ICTや介護ロボットは、介護現場における課題を解決する有効な手段となり得ます。しかし、その真価は導入そのものではなく、「現場に根づき、使い続けられ、成果が生まれること」にあります。

そのためには、事前準備、現場とのすり合わせ、運用設計、振り返りというプロセスを丁寧に進めていくことが求められます。補助金制度も賢く活用しながら、自施設にとって最適なかたちでのICT導入を進めていきましょう。

日本経営では導入前の業務の分析から、活用のための体制づくりまで、業務改善に特化した専門チームがいます。これまで数多くの現場に寄り添いながら取り組んできた経験をもとに、施設ごとの状況に応じたご提案やスケジュール設計が可能です。

ICTを「ただ入れる」のではなく、「現場で活きるかたちに整えていく」こと──それが私たちの役割です。制度も活用しながら、無理のない、着実な業務改善をともに進めていきましょう。どうぞ安心してご相談ください。

コンサルタントによる業務改善支援

\業務改善専門チームにお任せください/

業務の見える化支援
どの業務に課題があり、どの機器をどの目的で導入するべきかを明確にします

◆導入後の活用設計・業務フロー再構築
介護ロボット・ICTが現場にフィットするよう、業務の整理・導線の見直しを支援します

◆スタッフへの活用研修・定着支援
「触ったことがない」「どう使えばいいか分からない」などの不安を解消し、機器が活用できるよう支援します

活用のための体制づくり支援
介護ロボット・ICTを現場で使い続ける体制構築をサポートします

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